浸炭焼入れ
浸炭は文字通り、鋼の表面に炭素を侵入させることで表面を硬くします。低C鋼(C<0.2%、S15C、S20C、SCM415、SCM420など)の表面にCを浸みこませて高C鋼とし、焼入れを行います。浸炭剤としては固体、液体、ガス体があります。
浸炭焼入れの目的
耐摩耗、耐疲労性にすぐれた機械的性質を得る
浸炭焼入れの種類
ガス浸炭
メタンガスのような炭化水素ガスを浸炭用のガス成分に変成して浸炭する方法。ガスを浸炭炉に導入して930℃で浸炭し、そのまま800℃からジカ焼入れ(油焼入れ)します。浸炭後は150~200℃に低温焼戻しを行います。
例)ギヤ、シャフト、二輪車用カムプレート
浸炭窒化(ガス軟窒化)
浸炭処理の際、浸炭雰囲気にアンモニアを1~3%前後加えて炭素と窒素を同時に侵入させ、その後焼入れを行う方法。浸炭窒化温度は、通常の浸炭温度より低い800~870℃くらいで焼入れできるため変形が減少します。
例)ギヤ、シャフト、ワッシャーなど精密プレス部品
真空浸炭
浸炭炉に真空炉を用いる方法。真空炉中で加熱して、品物の表面を活性化させ、約1100℃の高温で浸炭性ガスを導入して高温で浸炭を行います。高速浸炭に適しています。
塩浴浸炭(液体浸炭)
塩浴で浸炭を行う方法。変形が少なく焼割れのない浸炭硬化が得られます。
例)ワッシャー等精密プレス部品、ヒンジ、ロッカーム
プラズマ浸炭
真空炉内で浸炭温度まで加熱し、浸炭用のガスを注入した後に高電圧をかけ、グロー放電によってガスをプラズマ化して浸炭を行う方法。従来のガス浸炭に比較して、浸炭時間が短縮できます。焼結材、ステンレス鋼、Ti材、Ti合金などの浸炭が容易に行なえます。
参考) 熱処理ノート 大和久重雄 著 (日刊工業新聞社)、金属熱処理科(職業能力開発大学校 研修研究センター編)
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