サブゼロ処理
C濃度が高い鋼を焼入れした際には、常温でマルテンサイト変態が完了していないので、残留オーステナイトが存在しています。残留オーステナイトは置狂いや置割れの原因となるばかりでなく、硬さの低下にもつながります。そこで、焼入れ直後にさらに0℃以下に温度降下し、マルテンサイト化させる必要があり、この処理がサブゼロ処理です。ゲージやベアリングなどの精密焼入れ部品にはこのサブゼロ処理が必要です。
サブゼロ処理の目的
- 焼入れした鋼の硬さの均斉化と上昇
- 置き狂い(経年変化)の防止
- 耐摩耗性の向上
- 寸法のマイナスをプラス修正
- 着磁性の向上
サブゼロ処理の方法
- 1.寒剤……ドライアイスとアルコール(-78℃)、液体窒素(-196℃)を用意する
- 2.行う時期……焼入れの直後(焼もどしの前)
- 3.処理温度……-60~-80℃
- 4.保持時間……25㎜厚につき30分の割合
- 5.昇温……サブゼロ温度から室温までの昇温は引上げて空中放置でもよいが、水中または湯中投入などのサブゼロ急熱を行うと残留応力が解消され、サブゼロ割れの防止にもなる
- 6.焼もどし……サブゼロ昇温後はただちに所定の温度による焼もどしを行う
サブゼロ処理の種類
普通サブゼロ処理
液体窒素で-80~-100℃で処理します。経年変化対策を目的とします。
クライオ処理(超サブゼロ処理)
-100℃以下のサブゼロ処理をクライオ処理(超サブゼロ処理)といいます。普通サブゼロとの違いは、クライオ処理は耐磨耗性の向上が目的で、工具や刃物に適用して威力を発揮します。また更なる経年変化対策として用いられます。
サブゼロ処理の事例1
SKD11の経年変化対策でサブゼロ処理を行います。焼き戻しの後でもサブゼロ処理を行いたい。
サブゼロ処理よりも先に焼き戻しをしたことによって残留オーステナイトがマルテンサイトに変化しにくくなっていることは事実です。サブゼロ処理の後には再度、焼き戻しを行ってください。経年変化をできるだけ減らすために『焼き入れ』の後に【サブゼロ処理⇒焼き戻し】を数回繰り返す場合もあります。
熱処理技術コラム
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