金属熱処理 Q&A

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ステンレス鋼のオーステナイト系とマルテンサイト系の違いは何ですか?

オーステナイト系ステンレス鋼(例: SUS304,やSUS316)は常温でオーステナイト組織を持ち非磁性で延性に優れる、といった特徴を持つのに対し、マルテンサイト系ステンレス鋼(例: SUS410, SUS420J2やSUS440C)は焼入れによってマルテンサイト組織に変換できるため高硬度で磁性を示すという違いがあります。


ステンレス鋼は内部の結晶構造(組織)によって大きく3つに分類されます:オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系です。
このうち、オーステナイト系はニッケルを多く含むことで室温でオーステナイトという構造を保つ鋼種です。
特徴として、磁石に付かない、靱性(粘り強さ)が高い、しかし熱処理(焼入れ)では硬くならない、という点が挙げられます。
代表例がSUS304やSUS316で、加工しやすく溶接もしやすいことから広く使われています。

一方、マルテンサイト系は比較的炭素が多く、焼入れ・焼戻しによってマルテンサイト組織へ変態させることで硬さを得る鋼種です。
磁石に付き、刃物のように非常に硬くできますが、その分靱性や耐食性はオーステナイト系ほど高くありません。
SUS420J2やSUS440Cがこの仲間です。

なお、オーステナイト系は非磁性と言いましたが、加工で一部マルテンサイト化(加工硬化)すると磁性を帯びることがあります。

またフェライト系(例: SUS430)は常温でフェライト組織であるステンレス鋼で、これは磁性を持ちますが炭素が低いため焼入れでは硬化せず、耐食性は中程度です。

それぞれの系統で性質が異なるため、用途に応じて使い分けられています。

 



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