金属熱処理 Q&A

 ステンレス鋼(SUS304、SUS440Cなど) / 固溶化熱処理 / 硬さに関するお問い合わせ

素朴な疑問です。どうしてSUS304は焼入れしても硬くならないのですか?固溶化処理なんて焼入れの様に急冷するのにかえって柔らかくなりますよね。

SUS304は「焼入れ」と呼ばれる急激な冷却をしても、工具鋼のように硬くなりません。
その理由は、SUS304の中に多く含まれるニッケルが「オーステナイト」という柔らかめの組織(結晶構造)を常温でも安定的に保ってしまうためです。

マルテンサイト系のステンレス(SUS420J2やSUS440C)などとニッケルの含有量を比較してみると、その違いが明瞭ですよ。


普通の鋼(S45C、SK3、SKS3、SKD11、SKD61、SKH51など)では常温で「オーステナイト」という組織を保つことはできません。
最低でも730℃以上高温にしないと「オーステナイト」という組織は現れてきません。
焼入れをすると、オーステナイトが「マルテンサイト」などの硬い組織に変わります。

しかし、SUS304の場合、昇温でも「オーステナイト」、加熱しても「オーステナイト」、焼入れしても「オーステナイト」
「オーステナイト」のまま、その変化がほとんど起こりません。

その結果、焼入れを行っても鋼のように硬くはならないのです。

ただ常温で何が何でも「オーステナイト」という状態にいるわけではありません。
加工硬化と言って強い冷間加工を受けると、一部がマルテンサイトに変態し、硬くなります。
『加工誘起マルテンサイト』といいます。SUS304のプレス品の一部が硬くなったり、磁石に反応するようになるのはこのためです。
SUS304は常温で「オーステナイト」であるが故に、説明がつくことがあります。
それは熱の伝導性が悪いことです。
さらに専門的な話になりますが「オーステナイト」は面心立方格子という結晶構造にあり、鉄原子と鉄原子の間が狭く、そのせいで熱が伝わりにくくなっています。
常温で「オーステナイト」の結晶構造であるが故にその性質を利用してステンレスのコップなどに使われています。

このように、SUS304は合金元素の効果と製造プロセスにより、常温でもオーステナイト組織を維持することができ、その結果、優れた延性、耐食性、非磁性などの特性を発揮します。

当社で行っている『オンライン熱処理勉強会』では、熱処理と材料について学ぶことができます。

 

 

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