金属熱処理 Q&A
ステンレス鋼(SUS304、SUS440Cなど) / 固溶化熱処理 / 析出硬化熱処理 / 機械構造用合金鋼(SCM435など) / 焼入れ / 焼戻し / 硬さに関するお問い合わせ
現在SCM435で制作している部品を耐食性に強いオーステナイトステンレス(SUS304やSUS316)で再作することを検討しています。構造上引張強さで1300Mpa(≒Hv400)以上満たすことは現実的ですか?
SUS304やSUS316は、ステンレス鋼の中でも特に熱処理による全体的な硬化が難しいオーステナイト系ステンレス鋼です。
通常の引張強度は約500-750 MPa(Hv160~200)程度で、1300 MPa(約Hv400)といった高い引張強度を得るのは非常に難しいのが現実です。
また、SUS304、SUS316は固溶化処理によって軟化させることはできても、全体的な硬化を行うことはできません。
材質上の考えられる代替案は以下の通りです。
代替案①
マルテンサイト系ステンレス鋼の使用
焼入れ焼戻しによって全体的に硬化させることができるマルテンサイト系ステンレス鋼を検討する方法があります。例えば、SUS410やSUS420などがその例です。これらの鋼種は、適切な熱処理を行うことで1300 MPa(約Hv400)以上の引張強度を達成する可能性があります。
代替案②
析出硬化型ステンレス鋼の使用
析出硬化処理によって全体を硬化させるタイプのステンレス鋼、例えばSUS630なども検討の余地があります。この鋼種は、熱処理によって1000-1500 MPa(約Hv320~430)の引張強度を達成可能です。
結論
SUS304、SUS316で1300 MPa(約Hv400)の引張強度を達成するのは現実的ではないと考えています。
上記の代替案を検討する必要があると考えています。ただし、引張強度の面で仕様を満たしても、他の機械的性質がSCM435とどのように異なるかについては、さらに検証が必要です。
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