金属熱処理 Q&A

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質量効果については鋼種や製品の大きさで、その影響度合いが変わる、という考え方で合っていますか?

質量効果は、鋼種や製品の大きさによりその影響の度合いが変わってきます。

「質量効果」とは、鋼材を加熱した後に冷却する際に、表面から急速に冷えるのに対し、内部は遅れて徐々に冷えることで、表面と内部で冷却スピードに違いが生じる現象に基づいてます。この冷却スピードの違いにより、内部で形成される金属組織が表面と異なり、得られる硬さに差が出ることがあります。

特に、焼入れ性が悪い鋼種ほど、そして体積が大きくなるほど、質量効果の影響を受けやすくなります。

SKD11、SKS3、S50Cという異なる鋼種で、様々なサイズ(25x25x25mmから75x75x75mmまで4種類)の試験片を用いて質量効果を比較する実験を行いました。
硬さ測定は、熱処理後の表面と、断面の表面付近から中心まで行われ、組織観察も実施しました。

その結果、サンプルサイズが最も大きい75x75x75mmの試験片を比較した場合、鋼種によって質量効果の現れ方に違いがあることが明確になっています。


◆SKD11では、表面と中心で組織の違いはほとんどなく、硬度もほとんど変わらず高い硬さを維持していました。
◆SKS3では、表面と中心で組織の違いはあまりなく、硬さはわずかに低下が認められました。
◆S50Cでは、表面と中心で組織に大きな違いがあり、硬さも著しい低下が認められています。

これらの結果は、質量効果が鋼種固有の性質(特に焼入れ性)と部品のサイズに強く依存することを示しており、必要な硬さや組織を得るためには、使用する鋼種と製品の大きさを考慮した材質の選定が重要であることを表しています。

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