金属熱処理 Q&A
機械構造用合金鋼(SCM435など) / 機械構造用炭素鋼(S45Cなど) / 炭素工具鋼(SK3など) / 焼戻し / 硬さに関するお問い合わせ
焼戻し後の硬さで何度で処理されたのかが分かるのですか?

焼戻し後の硬さから温度を『推測』することが可能です。
特にS45CやSKなどの炭素鋼の場合、焼戻し温度と硬さの関係が比較的シンプルであるため、
この性質を利用して簡易的に処理温度を見積もることができます。
これは、鋼材を焼入れして硬くした後、再び加熱する「焼戻し」という熱処理において、加熱温度(焼戻し温度)が高くなるにつれて硬さが低下するという特性に基づいています。
つまり、ある焼戻し温度で処理された鋼材は、特定の硬さを示すため、逆にその硬さを測定することで、おおよその焼戻し温度を知ることができるわけです。
弊社では材質SK95(炭素含有量0.96%C)の試験片(φ10×10mm、焼入れ後の硬さ66.0HRC)を用いて実験結果をしてみました。
様々な焼戻し温度で処理したテストピースの硬さを測定し、その関係をグラフ化することで、焼戻し後の硬さから温度を推測するためのグラフを作成しています。
このグラフを用いることで、実物の焼戻し硬さを測定すれば、その硬さに対応する温度をグラフから読み取ることが可能になります。
ただし、この方法は簡易的なものであり、実際の温度を正確に証明するものではないことは意注意してください。
使用できる温度範囲はおおよそ150℃~600℃です。理由はその温度範囲以外は温度と硬さの相関関係が崩れるからです。
また、長時間の高温処理を行った場合は、硬さの値が変化し、このグラフによる推測と実際の温度に相違が出る可能性があります。
この簡易的な温度測定方法は、例えば、現物の正確な処理温度が分からない熱処理品(窒化処理品と一緒に処理されたものなど)の温度を推測する場合や、炉の温度分布を確認するために炉内に複数箇所にテストピースを設置し、それぞれの硬さの違いから温度ムラを観察する場合などに活用できます。
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