金属熱処理 Q&A

 割れる・折れる / 硬さに関するお問い合わせ

熱処理品について顧客からクレームがありました。実際の熱処理品を調査したところ結晶粒が幾分粗大化している恐れがあるとの回答を試験機関からもらいました。結晶粒が粗大化するとどのような影響があるのでしょうか?

所定の焼き入れ温度を超えて処理した場合や長時間焼入れ温度で保持し過ぎた場合に、鋼の結晶の各粒々が通常よりも大きくなることがあります。これを『結晶粒の粗大化』と言います。

結晶粒が粗大化すると機械的性質である『伸び』や『衝撃値』に影響を及ぼします。

 

結晶粒が粗大化のしていないものと
結晶粒が粗大化しているものを比較した場合
“硬さ試験”の変化は殆んど確認できません。
しかし引張試験における”伸び”および衝撃試験には顕著に現れます。
別の言い方をすると、結晶粒の粗大化は硬さにも影響を与えますが、その変化は引張強さや衝撃値ほど顕著ではない場合があります。
よって硬さ検査だけでは、結晶粒の粗大化を見逃す可能性はあります。

 

以下にまとめます。
『結晶粒の大きさ』『硬さ』『引張強さ』の関係は以下の通りです:

1. 結晶粒の大きさと硬さ・強さ
結晶粒が小さくなると、材料は硬くて強くなります。
これは、結晶粒が小さいと、材料の内部で結晶粒が動きにくくなる(≒硬い)ためです。

2. 硬さと引張強さ
材料が硬くなると、引張強さも強くなります。
硬さと引張強さは両方とも、材料の変形に対する抵抗力に関係しています。

3. 結晶粒の大きさと引張強さ
結晶粒が小さくなると、引張強さも強くなります。結晶粒が小さいと、材料が変形しにくくなるためです。

これらの関係は、次のようにまとめられます:

● 結晶粒が小さい ・・・ 材料が硬くて強い
●材料が硬い ・・・ 引張強さが高い
●結晶粒が小さい ・・・引張強さが高い

ただし、あまりに結晶粒が小さすぎると、逆に強さが下がることもあります。

 

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でも、ここで疑問が生じてきます。
最初の回答のところで以下のように回答しました。

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結晶粒が粗大化のしていないものと
結晶粒が粗大化しているものを比較した場合
“硬さ試験”の変化は殆んど確認できません。
しかし引張試験における”伸び”および衝撃試験には顕著に現れます。
別の言い方をすると、結晶粒の粗大化は硬さにも影響を与えますが、その変化は引張強さや衝撃値ほど顕著ではない場合があります。
よって硬さ検査だけでは、結晶粒の粗大化を見逃す可能性はあります。
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一方で

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材料が硬くなると、引張強さも強くなります。
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とも説明しています。

 

結晶粒の粗大化が硬さにはほとんど影響を与えない一方で、引張強さに影響を与える理由を説明します。

【硬さと結晶粒の関係】
『硬さ』は、材料の表面を押し込む力に対する抵抗力を表しています。
硬さ試験は通常、<非常に小さな領域>で行われます。このため、個々の結晶粒の影響を受けにくく、結晶粒の大きさが硬さ試験の結果に与える影響は小さいのです。

【強度と結晶粒の関係】
『引張強さ』は材料が引っ張られたときに破断するまでの最大応力を表しています。
引張試験は、<材料全体の性質を反映>します。結晶粒が粗大化すると、結晶粒界(結晶粒の境界)が少なくなり、材料全体としての強さが低下します。
結晶粒界は、変形や亀裂の進行を止める役割を果たすため、細かい結晶粒を持つ材料の方が変形や亀裂に対して強くなります。

(まとめ)
硬さ試験は局所的な性質を評価するため、結晶粒の大きさの影響が少ない。
引張強さは材料全体の性質を評価するため、結晶粒の大きさが大きく影響します。結晶粒が粗大化すると、結晶粒界が減少し、変形や亀裂が進みやすくなるため、引張強さが低下します。

このように、硬さと引張強さがそれぞれ異なる理由で結晶粒の大きさに対して反応するため、結晶粒が粗大化しても硬さには影響が少なく、引張強さには影響が大きく出るのです。

 

▽ダウンロード資料
SUS304 引張試験データ


▽ダウンロード資料
『材料費の比較』と『熱処理対応』早見表熱処理材料と価格

 

 

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