金属熱処理 Q&A

 ステンレス鋼(SUS304、SUS440Cなど) / 応力に関するお問い合わせ

溶接したステンレス(SUS304)には、固溶化処理するのか応力除去焼鈍するのがよいのか悩むところです。何か判断基準はありますか?

SUS304のような

オーステナイト・ステンレスでは

溶接後には粒界腐食対策として

固溶化処理するのがベストだと考えています。

 

しかしさまざまな理由から

それがかなわない時は

次の最善策として

SUS304Lや316Lなどの

低炭素ステンレスを選定して

応力除去焼鈍することも

考えられます。

 

一般的ではないですが

チタン添加したSUS321や

ニオブを添加したSUS347

(安定化ステンレスと言う)

も粒界腐食対策としては有効です。

 

→ステンレス(SUS304) 溶接した後の熱処理条件別比較

 

 

SUS熱処理Q&Aまとめ



SUS304の焼鈍と固溶化処理の違いについて
SUS304の焼鈍と固溶化処理の違い

熱処理の違いによる SUS304塩水耐久テスト

 

 

◆固溶化熱処理の概要

固溶化熱処理は、鋼材を高温に加熱し合金成分を均一に溶解させ、急冷してその状態を維持する処理です。これは、オーステナイト系ステンレス鋼に多く用いられ、加工や溶接による内部応力の除去や、劣化した耐食性の回復を目的としています。

◆固溶化熱処理のメリットとデメリット

メリット
1. クロム炭化物やシグマ相を固溶させることで、最良の耐食性を実現。
2. 再結晶により軟化し、内部応力を除去。
3. オーステナイト単相の組織を確保し、耐食性を著しく向上。

デメリット
1. 高温で長時間保持すると結晶粒が粗大化する可能性。
2. 急冷による熱ひずみにより変形が生じることがある。
3. 引張強さの低下。

◆固溶化熱処理の仕組み

オーステナイト系ステンレス鋼は、加熱や応力の影響で耐食性が低下することがあります。これはクロム炭化物の析出により、不動態皮膜を形成するクロムが不足するためです。固溶化熱処理を行うことで、クロム炭化物を再固溶させ、耐食性を回復させることができます。

◆固溶化熱処理の温度

固溶化熱処理の温度は鋼種によりますが、一般的には1000℃~1150℃です。例えば、SUS304の場合、1010℃~1150℃で急冷を行います。

◆固溶化処理の注意点

固溶化熱処理を行う際には冷却速度が重要です。冷却速度が速すぎると熱ひずみによる変形が生じる可能性があり、遅すぎるとクロム炭化物が再析出して耐食性が低下する可能性があります。

 

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