金属熱処理 Q&A

 ステンレス鋼(SUS304、SUS440Cなど) / 固溶化熱処理 / 真空熱処理に関するお問い合わせ

ステンレス鋼(SUS304や316)に磁石が付くことがあるのはなぜですか?

結論として、SUS304やSUS316などオーステナイト系ステンレス鋼は基本的に非磁性ですが、加工や溶接によって部分的に組織が変化し、磁石にくっつくことがあります。
具体的には、冷間加工でマルテンサイトという磁性を持つ構造が生じたり、溶接部にフェライト系の組織が混ざることで磁性が現れる場合があります。

オーステナイト系ステンレス(例: SUS304, SUS316)は元来、磁石に付かない性質を持っています(オーステナイト組織自体が磁性を帯びないため)。
しかし、現実には「ステンレスなのに磁石が付く」と驚かれることがあります。
その主な原因の一つが加工硬化によるマルテンサイト化です。
SUS304は強く塑性変形させると、一部がマルテンサイト組織(磁性を持つ硬い構造)に変わってしまう性質があります。
例えば、SUS304の板を冷間圧延で薄く延ばしたり、繰り返し曲げ加工すると、加工した部分に磁石が付くことがあります。
また溶接の場合も、溶接金属が冷却時に完全なオーステナイトにならず、一部フェライト(磁性を持つ鉄に似た組織)を含むことがあります。
これは溶接時の割れを防ぐためにステンレス用溶接材があえて少量のフェライトを含む成分設計になっているためです。
その結果、溶接ビードやその近くに磁石が弱く付くことがあります。
以上のように、材質そのものは非磁性でも加工履歴や溶接の影響で局所的に磁性が現れることがあるのです。




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