金属熱処理 Q&A

 ステンレス鋼(SUS304、SUS440Cなど)に関するお問い合わせ

SUS304とSUS316の大きな違いは何ですか?

SUS304とSUS316は、どちらも身のまわりに広く使われている「オーステナイト系ステンレス鋼」の仲間です。

もっとも大きな違いは、SUS316にはモリブデン(Mo)という金属が約2〜3%含まれていることです。このモリブデンが、塩分や薬品に対する耐食性を大きく向上させてくれるため、特に海の近くや薬品を扱う環境での使用に向いています。

たとえば、海水や塩酸などに含まれる塩化物イオンは、金属の表面に「孔食(こうしょく)」や「すき間腐食」と呼ばれるサビを引き起こす原因となります。SUS316は、モリブデンの効果でこうした腐食に強く、長持ちする素材として知られています。

この「サビに強くなる理由」は、不働態皮膜(ふどうたいひまく)という目に見えない薄い膜の安定性が関係しています。
不働態皮膜は、主にクロムと空気中の酸素によってつくられ、金属表面を保護しています。
SUS316に含まれるモリブデンは、この膜の質を高めて、膜が壊れにくくすることで腐食への抵抗力を強くしてくれるのです。

一方で、価格については、SUS316はSUS304よりもおおむね40〜50%ほど高価になる傾向があります(時期や仕入れ先によって変動あり、当社独自調査)。

 

以上のことから以下のように使い分けされています。

SUS304:一般的なサビに強く、コストを抑えたい用途に適しています
(例:家庭用品、建材、水道設備など)。

SUS316:塩分や薬品に強く、より過酷な環境に適しています
(例:海沿いの施設、化学プラント、医療機器など)。

 



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